排尿トラブルの原因と対処法

2025年05月20日

排尿障害

排尿トラブルは、様々な種類があり、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。今回は、その原因から対処法までを詳しく解説します。

排尿トラブルとは

排尿トラブルとは、正常な排尿が困難になったり、通常とは異なる排尿状態になったりすることをいいます。具体的には、頻尿、残尿感、排尿痛、尿漏れなどが挙げられます。これらの症状は、生活の質を著しく低下させるだけでなく、重大な疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。

排尿トラブルの主な原因

排尿トラブルの原因は多岐にわたりますが、主なものとしては以下が挙げられます。

前立腺肥大症

男性に多く見られる疾患で、前立腺が肥大することで尿道を圧迫し、排尿困難や頻尿を引き起こします。加齢とともに発症率が高まります。前立腺肥大の主な原因は加齢で、年齢を重ねると男性ホルモンの変化などにより、前立腺が大きくなりやすくなります。特に70歳以上の男性の約70%が前立腺肥大症を発症するとされており、高齢になるほどリスクが高まります。(※2)

過活動膀胱

膀胱が過敏になり、尿意切迫感や頻尿、夜間頻尿などを引き起こす疾患です。原因は様々で、神経系の疾患や生活習慣、ストレスなどが関与していると考えられています。

膀胱炎

細菌感染などが原因で膀胱に炎症が起こる疾患です。排尿痛や頻尿、残尿感などが主な症状で、女性に多く見られます。女性は、尿道が短く肛門や膣が近いため、細菌が膀胱に入りやすい構造になっており、膀胱炎を発症しやすい傾向があります。

尿路結石

腎臓や尿管、膀胱などに結石ができる疾患です。結石が尿路を塞ぐことで、激しい痛みや排尿困難を引き起こします。尿路結石ができる原因として、飲食物に含まれるシュウ酸(ほうれん草やナッツなどに多い)や動物性たんぱく質の過剰摂取、水分不足などが結石形成に関わります。また、糖分やプリン体を多く含む食品・アルコールの摂取もリスクを高めます。

神経因性膀胱

脳や脊髄の疾患によって膀胱の機能が障害される疾患です。排尿困難や尿漏れ、頻尿などが起こります。主な原因は、脳、脊髄、末梢神経のいずれかに障害が生じることです。脳卒中(脳出血・脳梗塞)、パーキンソン病、多発性硬化症、認知症、頭部外傷、脳腫瘍、脊髄損傷、椎間板ヘルニア、脊椎腫瘍、二分脊椎、脊椎炎、脊椎血管障害、糖尿病性神経障害、骨盤内手術後の神経損傷、腰椎疾患(椎間板ヘルニア、腰椎分離症など)などの後遺症として発症する場合があります。

その他

ストレス、冷え、水分摂取量の過不足、特定の薬剤の副作用なども排尿トラブルの原因となることがあります。とくに、薬は排尿障害の重要な原因の一つであり、「薬剤性排尿障害」と呼ばれます。多くの薬が膀胱や尿道、排尿に関わる神経系に影響し、尿が出にくくなったり、尿漏れなどの排尿トラブルを引き起こすことがあります。

排尿トラブルの種類と症状

排尿トラブルには様々な種類があり、それぞれ症状が異なります。

頻尿

夜間頻尿

排尿回数が異常に多い状態を指します。日中の排尿回数が8回以上、夜間の排尿回数が2回以上の場合に頻尿と診断されることが多いです。ただし、排尿回数は個人差が大きいため、「8回以下でも自分で多いと感じる場合」は頻尿と考えられます。また、夜間に2回以上トイレに起きる場合は「夜間頻尿」とされます。

残尿感

排尿後にも尿が残っている感じがする状態を指します。膀胱の機能低下や前立腺肥大症などが原因となることがあります。

排尿痛

排尿時に痛みを感じる状態を指します。膀胱炎や尿路結石などが原因となることが多いです。

尿漏れ(尿失禁)

排尿痛

自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態を指します。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性尿失禁などがあります。尿漏れは高齢者だけでなく、20代から60代まで幅広い年代で経験されています。特に女性では、20代でも57.1%、30代で64.4%、40代で約30~62%、60代で41.1%、70代以上で48.0%と、どの世代でも高い割合で尿漏れを経験していることが複数の調査で示されています。30~40代で初めて尿漏れを経験した人が60%以上というデータもあり、尿漏れは30代から40代で発症するケースが多いことがわかります。また、40代女性では約3人に1人が尿漏れを経験しているという報告もあります。(※1)

尿が出にくい(排尿困難)

尿意はあるのに尿が出にくい状態を指します。前立腺肥大症や尿道狭窄などが原因となることがあります。

夜間頻尿

夜中に何度もトイレに起きる状態を指します。加齢や生活習慣、疾患などが原因となることがあります。夜間頻尿(夜間に2回以上トイレに起きる状態)は、加齢とともにその割合が高くなることが複数の調査で示されています。

  • 40~49歳では男性10.3%、女性8.5%
  • 50~59歳では男性20.6%、女性15.4%
  • 60~69歳では男性39.7%、女性28.6%
  • 70~79歳では男性62.0%、女性48.3%
  • 80歳以上では男性83.9%、女性71.2%

また、40歳以上の男女を対象にした調査では、夜間に1回以上トイレに起きる人は男性で72%、女性で67%と非常に多く、70歳以上になると男性の約70%、女性の約60%が夜間2回以上排尿のために起きていることが分かっています。(※3)

排尿トラブルの対処法

排尿トラブルの対処法は、原因や症状によって異なりますが、一般的なものとしては以下の点が挙げられます。

生活習慣の改善

水分摂取量を調整する、カフェインやアルコールの摂取を控える、規則正しい生活を送る、適度な運動をする、冷え対策をする、ストレスを解消するなど、生活習慣を見直すことが大切です。

骨盤底筋体操

骨盤底筋を鍛えることで、尿漏れや頻尿の軽減が期待できます。

骨盤底筋体操のやり方

  1. 姿勢を整える
    仰向けに寝て膝を立てる、椅子に座る、立ったまま、など自分が楽な姿勢で始めます。
  2. 骨盤底筋を締める
    肛門・尿道・膣(女性の場合)を「じわっと」引き締めるイメージで締めます。息を吐きながら5秒程度キープします。
  3. 力を抜く
    息を吸いながら力を抜き、リラックスします。
  4. 繰り返す
    上述の「締める」「ゆるめる」を10回繰り返します。

薬物療法

頻尿や過活動膀胱に対しては、膀胱の過敏性を抑える薬や尿意を和らげる薬などが用いられます。前立腺肥大症に対しては、前立腺を小さくする薬や尿道を広げる薬などが用いられます。

手術療法

前立腺肥大症や尿路結石など、薬物療法で改善が見られない場合は、手術療法が検討されることがあります。

まとめ

排尿トラブルは、誰にでも起こりうる可能性があります。しかし、適切な対処をすることで症状を軽減し、快適な生活を送ることができます。気になる状態がある場合は、早めに専門医に相談しましょう。

参考)※1:

https://kyodonewsprwire.jp/release/201910162218#:~:text=20%E4%BB%A3%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE57.1%EF%BC%85%E3%80%8130%E4%BB%A3%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE64.4%EF%BC%85

※2:

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/zenritsusenhidaishou/genin.html

※3

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